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2002.9.8号 06:00配信


優秀映画鑑賞会




とき:平成14年10月19日(土)〜20日(日)午後1時から上映
ところ:網走市民会館大ホール(網走市南6条西2丁目)

観覧料:500円(1日券)2本の映画を観ることができます。
チケット取り扱い
エコーセンター、網走市民会館、網走市役所売店、キタノ靴店

主催:網走市優秀映画鑑賞推進事業実行委員会・網走市教育委員会・文化庁・東京国立近代美術館フィルムセンター


10月19日(土)
『おかしな奴』
1963年 東映(東京)110分
監督:沢島 忠
出演:渥美 清、三田佳子、南田洋子、加藤 嘉、ほか
自ら「珍顔」を名乗り、戦後の落語界で爆発的な人気を誇った風変わりな落語家、三遊亭歌笑(1917年〜1950年)の短い人生を描いた東映作品。歌笑を演じた渥美清にとって、この映画は『拝啓天皇陛下様』(1963年)やアフリカを舞台にした『ブワナ・トシの歌』(1965年)と並んで「寅さん」以前の代表作といえるだろう。監督の沢島忠は東映の中でも新しい世代に属し、中村錦之助(後に萬屋錦之介)主演の時代劇「一心太助シリーズ」(1958年〜1963年)など、フットワークの軽い演出で知られる。実在の歌笑はナンセンスな笑いを得意としたことで知られたが、沢島監督はあえてこの落語家の生涯を、滑稽な笑いばかりでなく、夫婦愛を軸にそこはかとない哀しみをこめて描いている。やがて名作『飢餓海峡』(1694年)を執筆することになる脚本家・鈴木尚之や、数々の黒澤明作品に音楽を提供した作曲家・家佐藤勝など、スタッフ陣の豪華さでも注目に値するだろう。

『喜劇・大安旅行』
1968年 松竹 94分
監督:瀬川昌治
出演:フランキー堺、伴淳三郎、新珠三千代、笠置シヅ子、ほか
新婚カップルのあふれる和歌山県の紀勢本線沿線を舞台に、蒸気機関車の機関士と専務車掌という「鉄道一筋」の父子の恋愛騒動を描いた松竹喜劇「旅行シリーズ」(〜1972年)の第1作。子の作品がヒットするや、松竹のドル箱シリーズとして全国の鉄道沿線でロケーションが行われた。ここでは、伴淳三郎とフランキー堺が父子を、相手役となる料理屋の母娘の笠置シヅ子と新珠三千代が演じ、恋心や人情、嫉妬といった感情が入り交じる様が、土地の風物も折り込みながら鮮やかに描写されている。1960年代以降の日本の喜劇映画を代表する瀬川昌治監督は、アクの強いコメディアンたちの多様な持ち味を伸ばすことに優れ、多くの喜劇人を印象的にスクリーンに登場させている。瀬川監督は「旅行シリーズ」の前にも東映で渥美清主演の「列車シリーズ」(1967年〜1968年)をヒットさせており、いずれも当時の国鉄が全面的に協力している。


10月20日(日)
『吹けば飛ぶような男だが』
1968年 松竹(大船)91分
監督:山田洋次
出演:なべおさみ、緑魔子、犬塚弘、芦屋小雁、ほか
大阪の街を舞台に、やくざ幹部に憧れるチンピラと九州から出てきた家出娘の恋模様を描いた山田洋次監督の秀作コメディ。最初チンピラの三郎は家出娘花子をだまして金を稼ごうとするが、善意のかたまりのような花子の無垢さに打たれ、やがて心のつながりを感じていく。当時、若手コメディアンの成長株であったなべおさみと、一風変わった存在感を放つ女優緑魔子が不器用な「連帯」で結ばれた二人を好演したほか、ミヤコ蝶々、犬塚弘といった助演組、さらには小沢昭一による活弁調の解説もこの作品に独特の彩りを添えている。山田監督は、この作品に込めたのは「アホなチンピラ」のおかしさであると後に述べたが、その一方でほろ苦い結末の描き方も魅力となっている。脚本はほとんど森崎東が執筆しているが、社会の決まり事から外れた世界で生きる人々への共感は、後の「フーテンの寅」像にもつながるだろう。「キネマ旬報」ベスト第10位。

『あゝ軍歌』
1970年 松竹 88分
監督:前田陽一
出演:フランキー堺、財津一郎、倍賞千恵子、北林谷栄、ほか
戦争中、精神障害の真似をしてわざと野戦病院に入り、死を逃れた二人の男は、その後、戦没者をまつる神社へ遺族を案内する怪しげな観光ガイドとして暮らしていた。その男たちのもとへお婆さん、未亡人、少女、ヒッピー風の男が次々と迷い込んでくる奇妙な生活を描いたこの作品は、1960年代以降の松竹喜劇を支えた前田陽一監督の代表作である。そこに息づく屈折した批判精神には師匠の渋谷実監督の影響も垣間見える。その作風について主演のフランキー堺は、「旅行シリーズ」の瀬川昌治監督の「軽喜劇」に対する、前田作品の「重喜劇性」と説明して敬意を表した。劇中の所々に軍歌が挿入されて作品のリズムを築いているが、この映画で「歌」が作品の血肉となっているように、前田監督は歌謡映画にも定評があり、『進め!ジャガーズ敵前上陸』(1968年)などのヒット作を送り出した。




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