2000.6.18号 06:00配信
染めのこと |
真っ白な冬の終わりを告げるのはフキノトウ。雪の残る地面の中でいち早く春の小さなぬくもりを感じて顔をのぞかせる。うちではこれを春一番のおひたしにして食べる。 食べても食べても間に合わずあっという間にフキノトウは花を咲かせる。そうした花を子ども達といっしょに取りに行って、今年一番の染めをする。フキノトウは透き通るような葉と同じ、こわれそうなやさしい黄緑色に染まる。ほんの数週間後にはフキノトウはフキとなり、染めても落ち着いた緑になる。 草木染めをしていると不思議と自然のこと環境のことをいつも考えさせられる。フキノトウにしてもタンポポにしても、そこにあるものすべてをむしり取って染めようとは思わない。咲き乱れる中からいくつかいただくという気持ちにさせられる。 染めをしていると、わがままだった幼いころの自分を母親がぎゅっと抱きしめてくれるような、そんな気分になる。安堵感が体中を駆け巡り訳もなくうれしい。人間社会につぶされていた自分が、ふっと母なる自然に抱きしめられたような気分になる。 未熟な作品だけど、少しでもたくさんの人に自然のぬくもりを感じさせるようなものを作りたい。ストールを巻いた時、抱きしめられるような気持ちになってそっと目を閉じてうれしくなるような、そんなストールを作りつづけたい。 |