2001.2.15号 10:00配信


「2つのアートワークをふりかえる。」

昨年の暮れと今年の2月、2つのアートワークを経験する事となった。


1つは佐呂間神社境内のプロジェクトと、もう1つは美術館でのインスタレーション作品。佐呂間神社でのプロジェクトは佐呂間町商工会青年部が毎年行なっている、イルミネーション事業から話しが始まった。この事業は年末から年明けにかけてイルミネーションを作成し、町を少しでも賑あわせようと言う主旨で行なわれていたが昨年は世紀が変わる年だったので、町民の多くが年越しをする佐呂間神社をイルミネーションで飾ろうと言う話しになった。場所が神社の為、賑やかなイルミネーションでは雰囲気が壊れてしまうので神社の神秘的な雰囲気を引き出す用なイルミネーションを考えた。そこでアートピースを点在させて境内の森を1つのインスタレーション空間となるように考えた。

これがイメージ画像です。
この時点で既に「佐藤千織」さんの作品「Winter Marks」がイメージの中に浮んでいた。その植物のようであり神秘性を持った紙の作品が神社の境内のイメージと合うと思ったのだ。そこで「Winter Marks」を置く前提で展示用の光るテーブルを作成した。そのテーブルの上に「Winter Marks」を置くと、ほのかと光り幻想的なものとなった。
そのアートピースを18個境内の森の中に点在させた。夜の神社が持つ独特な空気感と、雪の森に浮び上がるアートピースが幻想的な雰囲気を創り出した。
大晦日の一夜限りの展示だったが、とても記憶に残る空間が生まれた。

2つ目は「佐藤千織」さんとの2人展の為の作品。

これは現代アートの1つであるインスタレーションアート。東京の住むテキスタイルアーティストとのコラボレーション空間。
1週間だけの仮設空間。
平面は三尺グリット上に45mm角の柱が120本立っている。その列柱の中にアートピースが30個並ぶ。
訪れた人達はこの柱の空間を自由に歩き回る。
人間が動き回れる最小限のグリット単位であるこの空間を、インスタレーションと言う形ではあるが実際の空間として体感できた事は貴重な経験となった。また建築の分野以外の人との共同作業の楽しさも学ぶ事が出来た。
この2つのアートワークは僕にとって大変貴重であり楽しい経験となった。昔から芸術、特に現代アートには興味があった。しかし自分で何かを作ろうとか何かに参加しようなどとは考えた事がなかった。アートは鑑賞するものだと思いこんでいた。学校の授業で絵や物を作る作業は経験していたが、それがアートだとは一度も思った事が無かったし、それがアートだと先生に教えられた事も無かった。

実はこのアート展を見に来た北見の保育園の理事長さんから面白い話しを持ちかけられている。来月なのだが、園児が作った「お面」を展示する空間を保育園の中に1日だけ作ってもらえないかと言う話しだった。僕はこの時思った。園児達が自分の手で作った「お面」が「アート」だと気付いてほしいと。仮設の「小さなギャラリー」に自分の「お面」が展示された時、それがアートだと感じてほしいと。こうして今、新しいアートワークが始まろうとしている。

2つのアートワークを通してアートの楽しさを再認識させてもらった。同時にアートは鑑賞するものではあるが、参加したり自分で作ったりも出来るのだと教わった。そして、もっと広く色々な人達にもこの楽しさを知ってほしいとも感じた。

2つのアートワークを通して。
建築家 五十嵐 淳

千織さんのレポートはこちら

index総合index掲示板




Home
(C) 2001 webnews
ご意見・ご感想・お問い合わせはwebmaster@webnews.gr.jpまで