2001.11.12号 07:00配信


大草原からのぷちメッセージ

牛飼い 今昔物語

(by いくちん)


家のばあちゃんがよく、「昔は○○だったのに、今の人は良いねぇー」っと言う。嫁いだばかりの頃は、若さゆえか耳ざわりでしょうがなかった。「そんな事言ったって、今と昔じゃ、時代が違うよ〜」と思ながらも、ニコニコと「そうだね。昔は大変だったんね」なんて相槌を打つ。心は裏腹で、いつも不服を感じていた。でも確かに、昔に比べ、便利になっている部分が多い。今と昔の生活をちょっと比較してみようと思う。

第一に、農家の子ども達の今と昔。以前は、農家には沢山の子どもがいた。農家のみならず、私達のおばあちゃんの代には5,6人の子どもがいるのは珍しくないだろう。その頃の“子”の位置付けは、主に労働力だった。帰宅後の子ども達は、カバンを下ろすと畑の草を取ったり、牛追いをしたり、宿題よりも貴重な学習をしていたのだろう。今では、農業実習生などの制度があるため、子どもが農作業を手伝う姿など全く見られない。昔は、日曜だからといって外出できる割合は低く、もし出かけるとしても兄弟で畑のあぜでトンボを追ったり、近くの川で魚を取ったりする程度。現代では、ゆとりある農業を目指している農家が多く、農閑期にはなるべく休暇をとるように心がけているので、子ども達も両親と過ごす事が多くなっている。

農作業についても大幅に違う事は多々ある。冬支度の一つでもある畑おこし、昔は手押し式の耕耘機を使っていたらしい。また堆肥まきは、一輪車に堆肥を積み、スコップで畑にまいていたと言う。技術の進歩で今ではトラクターの後ろに取り付けた機械でラクラク畑をおこしたり、堆肥をまいたりしている。搾乳作業も大変楽になった。少し前までは、バケットミルカーといって鉄のバケツに吸引機がついたようなもので、一頭一頭搾った後、ヒトの手でクーラーまで運んでいたが、今ではパイプラインと言う機械が装備がされ、搾った牛乳はそのまま鉄の管でクーラーまで流れていくようになっている。更に最近では、ヒトが機械を持ち運ばなくても、牛が機械の装備された場所に自分で入って、搾乳されて戻るというミルクパーラーという施設を利用している農家もある。

このように改めて考えてみると、牛飼いさんの今と昔は、昔よりも今の方が便利で快適になっているという結論になってしまった。これは、農家の作業規模が大きくなっているため、必然的に一人あたりの労働力を軽減しなければ運営出来ないという事によるだろう。それに伴い、『進歩』という言葉が大きく影響する。これからも『進歩』し続ける世の中に対する期待は大きい反面、必要以上の『進歩』が通常の私達の生活に障害にならないかという不安も大きい。ばあちゃんが、「今はラクして設ける事ばかり。その内ひどい目に合よ。」などと口にするのには、奥深い意味があるのではないかっと感じるようになってきた。




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