2000.3.13号 11:00配信


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ネパールが抱える問題
未来に光を

今回は、視覚障害者の為に日夜努力を続ける福祉団体についてレポートします。

1981年の全国調査によると、ネパールの視覚障害者は総人口の0.84%。ネパール盲人福祉協会の推定では、全盲168,800人、弱視370,000人。その内、未就学児童は20,000人。現在、人口は約1.3倍に膨れ上がっているので、障害者も増加の一途をたどっていると思われます。

Nepal Association for the Welfare of the Blind(ネパール盲人福祉協会:以下NAWB)は、社会的に弱い立場の彼らを援助するべく、1985年に設立されました。その目的は、
 1.社会における差別の撤廃
 2.視覚障害者の経済的自立
 3.全ての分野における権利の保護
 4.視力低下の予防と治療
です。彼らがより良い生活を営めるよう、様々な活動が行われていますが、中でも目を引くのは盲児童への教育普及活動でしょう。教科書作りは、1989年から東京ヘレンケラー協会と提携し、本格的になりました。その他、ドイツ、オランダ、アメリカなどの団体から協力を得て、より多くの児童を就学させる計画が進められています。

<主な教育活動>
 1.6歳未満の幼児を持つ親へのサポート
 2.普通学校への入学奨励
 3.特殊教育教員の育成
 4.教科書や教材の供給
 5.盲児童用のホステル建設や奨学生の募集

<点字教科書の製作と配布数>
年度
コンピュータ
プレス機械

製作
配布
製作
配布
製作
配布
1988


472 342 472 342
1989


798 770 798 770
1990
105 105 840 425 945 530
1991
135 120 600 480 735 600
1992
120 112 1,123 815 1,243 927
1993
163
1,936 1,664 2,099 1,664
1994
166 127 1,958 1,415 2,124 1,542
1995
884 335 2,216 1,770 3,100 2,105
1996
1,348 661 4,068 3,317 5,416 3,978
1997
1,653 852 2,647 1,874 4,300 2,726
合計
4,574 2,312 16,658 12,872 21,232 15,184

最近、コンピュータによる製作が増えています。高学年の数学や理科は、手作りガッタン機械では無理なので、そういうものはコンピュータを使っています。私がいた時、プリンタが故障していて作業が遅れていました。あれ直ったのでしょうか。ちょっと気になりますね。ノルウェーの機械なので、部品が来ないと直せないそうで。メンテナンスや修理をする人がいないのは、問題ですね。教科書の質や耐久性もこれからの課題でしょう。

<特殊教育教員の育成数>
年度
クラス

派遣校
小学校
中・高校
1985
4 4 4
 
1986 9 7 16 10
1987 9 6 15 9
1988 13 5 18 15
1989 9 0 9 8
1990 10 0 10 10
1991 6 0 6 6
1992 4 0 4 4
1993 3 1 4 3
1994 4 0 4 4
1995 1 0 1 1
1996 2 2 4 3
1997 5 0 5 5
1998 1 2 3 2
合計
76 27 103

普通学校の教員を対象に、毎年1回、特殊教育訓練講座が行われています。
 場所 NAWB内の教室
 日数 約35日
 内容 障害児教育の歴史と現在の教育システム
     視覚障害のタイプと特徴
     日常生活での手引きと問題対処法
     教え方の練習と教材の使い方
     英語、ネパール語の点字(文法や読み方)
     コンピュータ、レクレーションなど
講義は、休憩2時間を挟んで朝9時から夕方6時まで、びっちり行われていました。ほとんどが点字教科書の読み方についての授業です。講師は、協会や学校で働いている方々が交代で務めています。ちらりと講義をのぞきましたが、皆さん、和気あいあいと楽しく学んでいらっしゃいましたよ。

<1998年度の全国奨学生数>
地域
男子
女子

ダラン 48 28 76
キルティプル 15 13 28
ポカラ 17 12 29
ダンガディ 20 8 28
ドゥリケル 15 10 25
ティミ 7 2 9
ラリトプル 20 12 32
バスビッティ 8 0 8
ネパールガンジ
6 6 12
ラハン 9 0 9
バレワ 14 13 27
マニグラン 9 8 17
バタラ 2 1 3
バラヒィ 2 0 2
ナガルジュン 2 0 2
ガウール 10 6 16
ドゥマルワナ 15 5 20
パンチカル 4 4 8
チョウゲラ 4 6 10
ナラコット 4 12 16
リンテル 6 9 15
マダンポカラ 7 10 17
カイラリィ 1 2 3
パトリヤ 2 0 2
パトマリィ 1 0 1
アマルマニ 0 1 1
サニスチャレ
1 0 1
ビラトナガル
0 1 1
シドゥラハ 1 0 1
ドゥハビ 1 0 1
チマリヤ 1 0 1
イナルワ 1 0 1
合計
253
169
422

<高学部卒業生>

 
卒業試験
受験者数
合格者

男子
女子
1985
4 3 1 4
1986 5 4 1 5
1987 4 4 0 4
1988 6 4 2 6
1989 4 2 2 4
1990 5 4 1 5
1991 2 1 1 2
1992 8 7 1 8
1993 4 3 1 4
1994 10 6 4 10
1995 16 13 3 16
1996 17 12 4 16
1997 10 9 1 10
1998 12 6 4 10
合計
107
78
26
104

健常児の就学率でさえ低いネパールでは、障害児の就学はかなり困難です。設備も教師も不足しており、受け入れ体制が整っていません。差別意識が根強く残っているので、家の奥深く隠されて生活をしている子供もいます。日常生活に必要な知識も持たないまま成長する彼らに、明るい未来があるかどうかは疑問ですね。真の平等社会を築くには、彼らにも平等に教育を施す必要があるでしょう。それに、障害のあるなしに限らず、モラルを含めた質の高い教育は、豊かな人間を育てるのに大切な事ではないでしょうか。

NAWBでは、誰もが一緒に学べる統合教育を目指していますが、全ての子供達が学校へ行けるようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。

統計資料:中村由起子著「アジアの障害者」NAWB1998年度事業報告書より


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