2000.2.26号 16:00配信


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その3


展示の思想

私がこの博物館の展示を依頼されたのは、会館前年の4月だった。建物の設計図を見せられて驚いた。その図面には恐竜の姿が見えたからだ。平面図も、博物館の機能を十分果たせるものとは思えなかった。
展示室も曲面を持っていて展示しにくいものだった。
しかし、1階の大部分を占める吹き抜けの主展示室の図面を見たとき、設計者渡辺豊一氏の意図が見えた。彼は現存する屯田兵屋を納めるためにこの博物館を設計したのだと。
そこで、展示は完全に建物の設計思想に合わせようと決心した。内部の構造的な美しさに合った展示デザインをと心がけたのである。
展示は「屯田兵の歴史」「上湧別の歴史」「屯田兵の肖像画」立体映像展示「少年はいかにして屯田兵魂に目覚めたか」の四種で構成した。
「屯田兵の歴史」は町の基礎を築いた屯田兵の入植から解散までをミニチュアのジオラマを軸に物語として構成した。
「上湧別の歴史」は1万年前に始まった上湧別の人類の歴史を現在までわかりやすく表現した。
「屯田兵の肖像画」は399人の屯田兵の肖像画を飾った。
立体映像は、大都会に住む上湧別町出身の一人の少年が、夢の中で屯田兵を体験し、自分の中に屯田兵魂を見つける物語である。
展示にあたっては小学校高学年に理解できるよう文字を最大限に押さえ、文体を簡潔にした。各テーマでは、問題を投げかける文章で展示の見どころを示唆した。
実物資料も、もっとも適格な情報を引き出せる資料厳選して観客の思考を集約する方法をとった。


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