ドーム基地は3800mの高地である。当然水の沸騰点は80℃〜85℃なので普通の炊飯は不可能である。普段は電気圧力鍋で炊いているのだが、「パェリャ」となると、蓋なしで洗米していない米をオリーブオイルで炒めていって、上に鶏肉や魚介類、ピーマン等をトッピングしてサフランで色づけと風味付けをし仕上げる物である。
リゾットと炊き込みご飯の中間に位置する「黄色つき魚介類、野菜、肉類のせピラフ」と言ったところか・・。ただでさえ普通の炊飯は不可能な所に持ってきて、そのまま作れば俗に言うめっこ飯になること必至である。「蓋なしで飯炊けってかー」の一声で却下しょうと思ったが、「不可能な事を可能にする料理人」のプライドとドクターの瞳に浮かんだ少女漫画の主人公のような星の光に心が動きトライすることにした。
まずはノーマルにパェリャ鍋で炊きあげていく方式は、火種がないのともし外でやっても上は冷凍、下は半煮え状態に突入することが予想されこの方式はやめた。発送を転換し「口に入った時パェリャみたいになってればいいじゃん」作戦にする事にした。
まずは電気圧力鍋に洗った米とスープを同量よりやや少な目にセットし、サフランとバターと月桂樹の葉っぱを投入して炊きあげ、炊きあがった色つきバターライスを、クッキングシートを敷いたパレットに敷き詰め、オリーブオイルでさっと表面だけ焼いて白ワインでパッとフランベしたロブスター・鯛・ムール貝・ホタテ貝・イカの輪切りたらば蟹・ブラックオリーブ等をきれいに並べ、塩・コショーして220℃のオーブンでこんがり焼き上げると「見た目はまさにパェリヤ」が出現した。
冷凍レモンをふりかけ、きりりと冷えた白ワインで食するとー70℃のドーム基地にバレンシァの風が吹き抜けるのを確かに感じた。苦し紛れに作った略式パェリャだが、福田ドクターはきっとこれが正式なレシピだといまでも信じているんだろーな。でも家庭のオーブンで手軽に出来るし味も「へえー」と声が出るくらい
おいしいのでちょっと気取りたいときなどお試しになってはいかが?。
「ドックのパェリャ」
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
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