2004.7.21号 12:00配信
■音楽屋♪(コラム) |
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2004/7/21(水)― こま ― 〜私が「彼」に興味を抱いた理由〜 7月上旬に発行されたMagi(マギー)というフリーペーパーのインタビュー記事原稿の写しを読ませていただいた時にそれまで「チェロって…どんな音だっけ? 楽団等で演奏されるチェロは見るけどはっきりとその音については感動を受けた覚えが無い」記事を読んでいくうち、私のぼやけた感覚に突然興奮が押し寄せてきた。 「スゴイ!面白そう!どんな演奏になるんだろう? これはみんな驚くぞ!チェロを好きな人ならぶったまげるだろう!」 こうして私は「彼」に興味を抱いたわけです。 では、その「興味を湧かせる記事」を、みなさまもご一読ください。 |
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チェロ 吉川よしひろ(THE CELLO ACOUSTICS)インタビュー 「チェロってこんなに自由なんだ」 取材・文:山野雄大 "ザ・チェロ・アコースティック"のライヴを観た。 この日は吉川(きっかわ)よしひろさんのソロ・ユニットとしてのライヴだ。ジャズやクラシック、タンゴやヒーリング・ミュージックを融合させた独自のユニット、だとは訊いていたが、この日初めて聴く筆者には、まず開演前から不思議なことがいくつか。・・・・座って弾く楽器なのに、椅子がない。 代わりに不思議な黒い箱と譜面台が置いてあるだけ。吉川さんが出てきて、疑問は驚きと共に氷解した。彼は黒い箱に片足を乗せ、立ったままチェロを弾くのだ。・・・・そして次の疑問。チェロ独奏ではやれることに限りがあるのでは? ふたつめの疑問も驚きの解答を呼ぶ。足元の黒い箱には、エフェクターやハードディスクが内臓されていて、足で操作しながらいま弾いた音を記録、それを再生しながら生音を合わせて弾いてゆく。つまり、一人で何人分もの合奏をやってのけるのだ。チェロはウッドベースにもなり、ボディを叩いたり擦ったりすればパーカッションにもなる。ギターのように弦をかきならし、ピツィカートのリズムと弦のメロディが融けてゆく。アコースティックな響きが多重に織り上げられてゆく自作曲を中心に、「アランフェス協奏曲」による自由なアドリブや、かの名曲「見上げてごらん夜の星を」など、チェロの様々な奏法を駆使したうえに、たった一本の楽器から何人分もの音楽を大胆に放ってゆく。 セカンド・アルバム『見上げてごらん夜の星を』発表を記念したこのライヴから数日後、お会いしてお話を伺った。現在はニューヨークを拠点に演奏活動を展開している吉川さんいわく「ニューヨークでもジャズ・チェロって3人しかいない」んだそうで、しかもチェロ1本となると、これはたいへん珍しい。 「とにかくチェロでアドリブやりたかったんです。人間の声に一番近い楽器だし、これだけ音域のある楽器はなかなかない」 ――サンプラーに生音を合わせてゆくことで、いろんなことができるんですね。 以前スタジオ・ミュージシャンをしていた頃、ギタリストが使うエフェクターをみて、チェロでも使えないかと試行錯誤して今のスタイルになったんです。他の楽器、たとえばフラメンコ・ギターとのデュオなどもやらせていただいてますが、一人でも、今のスタイルをもっと独自のものに作り上げたくて。 ――更なる可能性を開拓されるわけですね。 今度、ダンスを練習しようと思ってるんですよ。 チェロでアドリブしながら、楽しくみせたい。クラシックの演奏会に行かれる皆様も、一度だまされたと思って足を運んでいただければ、チェロってこんなに自由なんだ、と・・・・。 (2004年6月14日 セルリアンタワー東急ホテルにて) ※フリーペーパー「Magi」(7月上旬発行)より転載。 |
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