2001.5.20号 07:00配信


オーロラ・ハンティング

オーロラ観光は流氷観光?


イエローナイフは、カナダノースウエスト準州(NWT)の州都です。カナダのやや北西部から北へ。北緯62度にあり、日本列島の北部ならサハリンをズズっと越えて、ロシア大陸のヤクーツク辺りでしょうか。世界で10番目に大きいというグレートスレーブ湖畔にありますが、訪れた時は凍結した上に雪が積もっていて、湖なのか平原なのかよく分かりませんでした。

 市としてはカナダ最北部にあり、人口18、000人ながら州議事堂や博物館、ホテルなどかなりの施設が整っています。冬には気温−60度まで下がることもあり、北海道に例えると網走のような街です。※1


【イエローナイフの町並み】


 治安も非常に良いようです。もちろん油断は禁物ですが、どこを歩いていても、そう怖い目に遭うことはなさそうです。「ワカイ・オンナノコ・イルヨ・マッサージ・ドウ?」と怪しい日本語で話しかけてくるポン引きがいたり、ストリートチルドレンが身ぐるみはがしに群をなして襲いかかってくるマ○ラやバ○コクとは訳が違います。もちろん、有無を言わさず発砲されるアメリカ合州国都市部とも違います。

 イエローナイフ空港の大きさは新紋別空港と同じくらい。空港の天井には、オーロラをイメージしたと思われる垂れ幕が下がっていました。新紋別空港の天井は波打っていまして、こちらは流氷をイメージしているそうです。考えることは、洋の東西問わず一緒ですな。


【イエローナイフ空港】


 さて、私が紋別在住時(97年9月-00年9月)、ガリンコ号2など流氷ツアーに訪れる韓国人や台湾人を見ては「まったくなんでこんなものを観に、わざわざ遠いところへ」と思ったものです。  今でこそ、流氷が運ぶプランクトンが豊かな海を育むことが知られていますが、流氷は昔、特に漁師にとって厄介者。漁に出られないばかりか、場合によっては海難の原因にもなります。それが観光資源になると気がついたのは、たかがここ十数年の話でしかありません。

 オーロラも事情は同じようです。まず、平均的英語圏人に「Aurora」と言っても通じないらしいのです。彼らは極北の夜空に射す薄光を「Northen Lights」と呼びます。
 また、先住民族にとってオーロラは不吉なものであったそうです。考えればそれは当然で、予備知識もなしに夜空に光られた時には、そらぁ、ビックリします。

 イエローナイフへオーロラを見に来る観光客は99%が日本人です。そのため、街中には「Welcome ようこそ」なんて、カナダの田舎町のくせして日本語表記の歓迎幕があるほどで、現地のツアー会社やホテルには、日本語のできるスタッフがいます。ってゆうか、日本人そのものがいます。最近は、日本人の影響か、韓国・台湾系の人もたまに来るそうです。

 イエローナイフから去る機中で配られた「イエローナイファー」という地元紙には、たまたま、「MAPLE MANIA」と題して、日本人観光客の話題が載っていました。「メイプル(カナダのことかな?)・マニア」と題し「オーロラは単なる見せ物ではなく、日本人観光客は崇拝している」とまで書いてます。

 記事自体は、日本人がメイプルチョコだとか、甘い物が大好きで、イエローナイフの店から毎日消えていく−とか書かれている…ようです。


【地元の新聞1】


 「THE NUMBERS」という欄では、「オーロラ観光のため、毎冬、8000人の日本人観光客がイエローナイフを訪れるとみられる」「日本人観光客は、3泊4日の市内滞在中、1000ドル(8万円)を使う」と紹介されています。」なんてことが書かれている…ようです。※3


【地元の新聞2】


 バンクーバーで夜の街を案内してもらった日系二世ガイドは「カナダ人からみると、なんでオーロラなんか見に来るのか理解できない」と言っておりました。※4
 続けて彼は、カナダ人がオーロラを見に来る日本人を理解できないのは、桜の花の美しさが、儚く散ることにこそある点を理解できないのと同じだと解説してくれました。日本人なら「咲き誇る花は、散るからこそ美しい」という心を、ピッピッと理解できるはずです。

 そういった、アンビバレンツでわびさびな徒然なるままでセップクゲイシャガール的感傷は、オーロラを愛でるのに最高なオリエンタル・スピリッツなのかもしれません。


※1(当たり前と言えば当たり前なのですが、カナダは全体的に北海道的で、例えばバンクーバーも札幌のような街でした。人口は周辺を含め約200万人。緑と都市機能が上手く融合していました。私はこれまで小樽、横浜、東京、川崎、札幌、紋別、函館に住んできましたが、札幌が一番住み易く好きな街です。ススキノもあるし…)。

※2(余談で恐縮ですが、馳浩のフィニッシュホールド「ノーザンライト・スープレックス」は「北斗原爆固め」と訳されますが、「オーロラスープレックス」ではないのかしら?)

※3(AIR CANADAでは、機中で配った新聞を降りる際回収するのですが、せっかくの記念にと思い、やけに陽気でオーバーアクションな中年スチュワーデスさんに「ギブミー、ギブミー・デス・ニューズペーパー.ギブミー・チョコレート」と懇願したら、「OK、OK」と気持ちよくくれました)

※4(ガイドをしてくれた24歳の青年は、大学で日本文学を専攻。東京外大にも留学したことがあるそうで、「わびさび」や「スピリット」にこだわっているようでした。どうも日本語が関西イントネーションなので、聞いてみると母が関西人でした。恐るべし関西人!)



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