2006.3.16号 02:00配信
【序幕】 お茶と「起立!」「礼!」 議会傍聴3日目ともなると、慣れたものだ。 まるで勝手しったる友人の家を訪ねる気分。 ゆうゆう朝風呂浴びて身を清め、オートミールとコーヒーで朝食済ませた。 最近コーヒーはブラジルピーベリーの浅煎りがお気に入り。流行のエメラルドマウンテンなどという奴よりはるかに香り豊かで淡麗だ。それに安い! といっても、コーヒーは傍聴と何の関係もない。 しいていうなら、昨日、二日目は3Fロビーにお茶のサービスがあった。第1回目の休憩のとき、リクルートスーツを着こんだ若い男子職員が用意してくれる。お茶の出る傍聴は初めて。国会でもお茶は出なかった。 そのとき、コーヒーも出してくれよ…… と瞬間思ったが、わがまま言っちゃいけない。心の中で否定した。ここは神聖なる町議会なのだ。お茶だって町民の血税でまかなわれている。感謝の念をこめて恭しくいただかなければ。でもこれって自分が払った税金のうち! なら、どうどうと威張って飲むのかなぁー。新米は悩む。 諸先輩を見ると、何の屈託もなく、和気藹々飲んでいる。そうか、それでいいのだ! ノート片手に家を出る。9:00。 晴天。大地は凍りついている。 今日はどんな傍聴者に出会えるか楽しみだ。 3Fロビーに置かれた資料を眺めて、本日の議題をメモ、メモ。 本日はすでにお茶が用意してある。ポットに触ってみると温かい。昨日のリクルートお兄ちゃんが朝早くやってきて用意してくれたのだ。その誠意に涙がチョチョギレる思い。でも残念ながら私はcoffee党。お茶は飲まない。ごめんね、お兄ちゃん。 9:25、不安になってくる。なにがって? それは決まってるでしょ! 傍聴者だ。誰も現れない。不安の影が心をよぎる。もしかすると…… 不安をロビーにおいて、議場に入る。全員着席している。傍聴席には誰もいない。記者もいない。不安が増大。不安の影はいまや暗雲となった。 9:30。ベルが鳴る! と、突然声がかかる。 「起立!」 ゾロゾロと、全員起立。私もあわてて起立。 「礼!」 あわてて頭を下げる。その後「着席!」はなかったが、みんな思い思いに座ったようだ。 しらなかった。しらなかった。まだまだ傍聴新米なのだ。懐かしき小学校の慣習が、れんめんとわが湧別町議会に引き継がれている。キット、心を幼少の頃に戻して、純真な心で条例案の審議に当たろうというセレモニーなのだ。ウーン! やるのうー、おぬし! 本日も議員全員出席。役場側もフルキャスト。 役場側は向って左側のひな壇に町長、助役、8課長、右側には教育委員長、教育長、監査委員、農業委員会会長、農業委員会事務局長、社会教育課長、例の紅一点出納室長。実は出納室長は病気で入院中という。紅一点は代理の方らしい。 中央の一段高いところに押野議長、その左に議会事務局長、中央手前では事務局職員が付きっ切りでテープレコーダーを操作し、記録をとっている。例のリクルートお兄ちゃんだ。 【第1幕】次々と可決される議案 ● 日程第1 会議録署名議員の指名: 予想通り、10 坂東議員、11深沢議員が指名された。議長の発言をよく聞いていたら議会規則中にどの順番にこの仕事をするか、書いてあるらしい。この仕事って、いったいなにをするのか? それはまだ詳しくは分からない。 ● 日程第2 議案第18号 町税条例の一部改正条例について 税財課長が説明する。 昨年から国民健康保険税だとか固定資産税が税の均等化と称して値上がりしてきたらしい。町税も遠慮しながらチョコットだけ値上がりするようだ。デフレ状況を脱したと日銀総裁が言ったのはこのことだったのかと、みょうに合点する。 でもなぁー、世の中がデフレ、デフレと騒いでいたとき、地方税が下がったなんて話チットモ聞かなかったなぁー。 質問なく、可決された。チョコットだけだから何の文句もないのだろう。フム、そういうものか。 ● 日程第3号 議案第19号 湧別町社会教育委員会設置条例の一部改正条例について 総務課長が説明する。 委員数を20名から15名に減員する改正だ。15名の内訳は学識経験者13名、一般公募2名。 質疑なく可決。 ● 日程第4号 議案第21号 湧別町青少年問題協議会条例の一部改正条例について 総務課長が説明する。委員数を30名以内から15名に減員する改正だ。15名の内訳は学識経験者10名、町会議員2名、行政から3名。 4小形議員、11深沢議員から疑問が出るが、総務課長の説明で納得、異議なく可決された。 ● 日程第5号 議案第25号 湧別町総合介護条例の一部改正条例について ● 日程第6号 議案第26号 湧別町居宅介護支援事業の実施煮に関する条例の一部改正条例について ● 日程第7号 議案第27号 湧別町高齢者生活福祉センターの設置及び管理に関する条例の一部改正条例について 一括上程され、総務課長が説明する。国の法律の変更に伴う改正と言う。 5鈴木、10坂東、7石垣、4小形、1野口、13中谷、8広田各議員から質問が出される。 質問は料金表をはずし、「厚生労働大臣の定める額」とした部分に集中。分かりにくくなると言う議員の質問に、保険福祉課長は今後広報もするし、ケアマネージャーが対象者に丁寧に説明すると答弁する。除雪、給食、老人バス、老人福祉バス、移送サービス、火災報知機の削除も論議された。サービスの低下を心配する議員、この機会にサービスを合理化しようとする行政側。 結局、異議なく可決。 10:50に議長15分間の休憩を宣言する。 【幕間】 傍聴者は現れない。 どうやら昨日は、町長の「町政執行方針」と6議員の一般質問を目当てに傍聴者がどっと集まったのだろう。今日はあきらめるしかない。一人で傍聴を続けると腹をくくった。 卓上に並べてある資料からセッセとメモる。 トイレで民生課長に出会う。「ご苦労様です」と挨拶された。顔を覚えてくれたようだ。 【第二幕】 指定管理者制度の登場 11:05、議事再開。 ● 日程第8号 議案第28号 重度心身障害者及びひとり親家庭等の医療費助成条例の一部改正条例について 総務課長の説明、異議なく了承、可決。 ● 日程第9号 議案第30号 国民健康保険事業基金の設置、管理及び処分に関する条例の一部改正条例について 総務課長の説明、異議なく了承、可決。 ● 日程第10号 議案第31号 湧別町文化・スポーツ振興基金の設置、管理及び処分に関する条例の廃止条例について 総務課長の説明、異議なく了承、可決。 ● 日程第11号 議案第32号 個別排水処理事業特別会計条例の廃止条例について 総務課長の説明、異議なく了承、可決。 いやぁー、早い、早い。この調子ならあっという間に今日の議題は終了するぞ、と思っていたら、意外だった。次の議題で議場は大紛糾。 以下議案33号〜44号は一括提案される。 総務課長の説明によると、町内各地区の公民館、寿の家(老人のための集会所)、その他公園などの管理を各地区の自治会に委託し、自治会長を指定管理者にする条例だという。各自治会が主体的に管理運営していくことになる。合理化だ! ● 日程第12号 議案第33号 湧別町宮の森センター及び湧別寿の家に係る指定管理者の指定について ● 日程第13号 議案第34号 湧別町錦研修センター、錦寿の家および湧別町錦農村公園に係る指定管理者の指定について ● 日程第14号 議案第35号 湧別町川西地区公民館及び川西寿の家に係る指定管理者の指定について ● 日程第15号 議案第36号 湧別町信部内地区会館に係る指定管理者の指定について ● 日程第16号 議案第37号 湧別町東研修センター、東福祉の家及び東湧福祉の家に係る指定管理者の指定について ● 日程第17号 議案第38号 湧別町登栄床(とえとこ)生活改善センター及び登栄床寿の家に係る指定管理者の指定について ● 日程第18号 議案第39号 湧別町芭露(ばろう)地区会館及び芭露寿の家に係る指定管理者の指定について ● 日程第19号 議案第40号 湧別町上芭露地区会館及び上芭露寿の家に係る指定管理者の指定について ● 日程第20号 議案第41号 湧別町西芭露ふるさとセンター及び西芭露寿の家に係る指定管理者の指定について ● 日程第21号 議案第42号 湧別町東芭露地区会館に係る指定管理者の指定について ● 日程第22号 議案第43号 湧別町志撫子(しぶし)地区会館に係る指定管理者の指定について ● 日程第23号 議案第44号 湧別町計呂地地区活性化センター、計呂地寿の家及び湧別町計呂地交通公園に係る指定管理者の指定について 審議が開始された。 8広田:各自治会、自治会長は了承しているのか? ボランティア団体の打ち合わせなどからも料金を取るのか? 総務課長:昨年から、各自治会と相談してきた。各自治会から申し込みを受けて指定管理者を指定することになった。 社会教育課長:基本的には料金を取る。ボランティア団体の場合は、利用の内容によって決める。 8広田:ボランティア団体からの料金は申し込みの時点で決めるのか? 社会教育課長:そうだ。 8広田:利用の内容によっては料金を取らないこともあるのか 社会教育課長:そうだ。 5鈴木:各自治会から申し込みがあったというが、各自治会は悩んでいた。どんな点を悩んでいたのか? 町から支払う管理費に年限はあるのか? 平均して、自治会館の管理に85万円、寿の家の管理に21.6万円であるが、その公平さは? 総務課長:職員が自治会に出向き協議してきた。管理費は予算の中で決める。実績を見て年毎に決めることになるだろう。 各地区の施設には差がある。平成18年からの使用状況、徴収料金によって、次年度の管理費を決めていきたい。これは各自治会が了承している。 今後は、使用すると料金を払うのが原則になる。 5鈴木:契約内容は今後変化するのか? 利用が延びない地区はどうするのか? 総務課長:地区ごとに名年管理料を決めていく。契約内容は5年間変化しない。管理料は実績を見て、協議して決めていきたい。 5鈴木:随時協議が必要だと思う。 7石垣:寿の家で、ボランティア団体が無償で老人のために食事会を開催する。こういうとき、その打ち合わせなどには無償で会館が利用できるようにしなければならない。こんな場合、本来、行政が会館利用料を負担すべきだ。各自治会の判断で決めるというのはおかしい。ある程度、基準を決める必要がある。各会館で料金を取る、取らないがまちまちではおかしい。 社会教育課長:利用は原則有料だ。その場、その場で協議判断したい。 7石垣:判断するのが自治会長とするなら、基準が必要だ。無償の分は町で持つことにしてはいかがか? (町職員間で鳩首相談始まる。) 11:55、例によって議長、休憩を宣言。昼休みに突入! 【昼休】 昼食、家に帰らず役場前に開店したレストランに行く。これが始めて! この店は10数年前に開店した喫茶店、経営者が何代か変わって、このレストランは昨年開店したのではなかったか? 浅草の洋食屋風に店内をアレンジしている。60代、30代の母・娘が経営者のようだ。娘さんの方がシェフらしい。 ランチにオムライスを注文。 ミネラルウオーターと前菜が出て、しばらく時間があってオムライスが出される。オムライスを出すには時間が必要だ。短時間で出てくるオムライスにうまいものはない。 オムライスのできばえは星4つ。 オムライスのできばえで洋食屋の腕前が分かると、私は固く信じている。 これは、これは、鄙に稀なレストランがやっと湧別にもできたようだ! 閉店しないように応援しなくっちゃ…… でも、昼飯時というのに客は私一人。心配になってくる。 コーヒーは普通! 我が家でたてるブラジルピーベリーの方が馥郁としている。きっと、豆を焙煎してから30日以上経過しているのではないか? このランチセット、しめて1155円なり。価格はリーゾナブル! 嬉しいなぁー! 【第3幕】 助役登場! 助役:町にボランティア団体が利用する場合の利用料減免規程がある。それによると1/2に減額できる。残額1/2は自治会負担になる。免除、減額など自治会館のアンバランスは、自治会と協議しながら運用していきたい。 2中川:寿の家が不要になったらどうするのか? 助役:不要になったら地元と協議して、町が処分する。 2中川:地域の人が分けてくれと言ったらどうする? 助役:公募売却する。 4小形:古くなった場合の建替えは? 助役:維持・管理・建替えは自治会が主導して行う。町はそれを補助する。 10坂東:芭露地区会館は児童会館をかねている。その場合の利用料金は? 児童会館は町の仕事であり、町からは利用料金は取れないのだが……。 また、芭露地区では複数の建物の管理を指定管理者が行う。予算は複数、管理者は一人、予算を合わせて管理してもよいのか? 民生課長:児童館は現行どおりに運用していく。町90%費用負担とし、自治会は10%負担する。 税財課長:施設ごとの予算だ。自治法286条で目的別に予算を付けることになっている。したがって、会計は施設ごとに行っていくのが建前。 10坂東:児童館の利用状況の実態はそうなっているか? 10%も負担するのは過剰ではないか? また、会館と寿の家の枠は何とかならないか? 税財課長:合計金額の枠内で、どちらに使おうと、その使用は任意である。 民生課長:一応、本年は90%、10%で自治会は了承している。 10坂東:自治会長が了承したからと言ってそのまま実行してよいのか? 助役:平成18年は90、10でやってほしい。次年度は自治会と協議、変更していきたい。 4小形:行革の相談中に「建替えは自治会が主導して行う。町はそれを補助する。」と言う話はなかった。これには条例化が必要ではないか。指定管理者の決定に当たって、自治会にこの話をしたか? 助役:会館は町の財産であるが、今後建替えに当たっては自治会にも費用を持ってもらう必要がある。指定管理とは別次元の話である。今後検討していきたい。 9村川:条例が必要だ。それなら、建物をシッカリ直して地区に渡してほしい。助役の答弁は問題だ。 助役:将来については地区にももってもらう。町が持つべき部分もある。いろいろな選択肢を検討し、建替えが必要になったら地区と協議したい。 11深沢:助役の言っていることは、一体、いつ決まったのか? 「公の施設の建て替えに、自治会が費用を負担する」これを煮詰めて、答弁してほしい! 町職員間で悲痛な沈黙! 助役が言い過ぎたようだ。 例によって議長が助け舟。13:55まで10分間の休憩。 再開後、冒頭に助役発言。 助役:お詫びしたい。公施設の建築は地元と相談してやっていきます。 こうして、議案33号〜44号は一括採択された。 【第4幕】 一般会計予算の審議はじまる 指定管理者条例採択の後、その余勢をかって、議事は本定例町議会のハイライト、平成18年度予算になだれ込んだ。傍聴者がTany一人とは寂しい限りだ。36億円もの予算が決まろうとしているのに! ウーン! ●日程第24 議案49号 平成18年度湧別町一般会計予算について 税財課長が説明を開始する。歳出が最初だ。 [歳出] 1.議会費 ・・・・ 45,888(単位は千円) 2.総務費 ・・・・965,081 3.民生費 ・・・・319,767 4.衛生費 ・・・・161,727 5.労働費 ・・・・ 147 6.農林水産費 ・・228,218 7.商工費 ・・・・ 53,059 8.土木費 ・・・・374,588 ここまで詳細に予算書と補足資料を使って説明し、課長はへとへと! 聞いている議員もへとへと。手元に資料のない傍聴者は独り気楽なものだ。とっくにメモはやめてしまっているから、聞き流すだけ。時折、ははぁー!そんなこともあるんだ! と、納得しておればよい。面白いものだ。 数千円のものも含めて、関係する費用を約37億円も積み上げるのだから、大変だ。 休憩が宣言される。14:15。これは正真正銘の休憩。 議会には、水入り休憩と正真正銘の休憩があるのだ。押野議長、何回も水入りばかりやってきて、今度は本当の休憩が宣言できて嬉しかったのではないか? なぁーんてことはないか? 説明を聞きながら熱心に予算書をめくっていた議員たちのあいだから、「疲れた!」の声あり。 ご苦労様! それにしても、助役がすっかり萎れている。 16:27に議事再開。続けて次の費目が説明される。 9.消防費 ・・・・179,890 10.教育費・・・・266,509 11.災害復興費・・ 48 12.公債費・・・・746,594 13.諸支出金・・・259,424 14.予備費・・・・ 10,000 これが歳出の総て! しめて36億1100万円ほど。まだ一般会計だけ! 5000人の町もずいぶんとお金を使うものだ。 閉会は16:55。 「起立!」 「礼!」 議会事務局長の号令で、頭を下げて、なおると、三日目の定例町議会は終了した。とうとう、今日も傍聴者はたった一人! 今日はまっすぐ家に帰る。 TV桟敷で大相撲を観るにはころあいの時間である。 (三日目 終わり) |