2000.1.4号 08:30配信


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織物作家・佐藤千織さんのコーナー
千織の織物工房
Chiori Sato Textile Workshop


フィンランドの冬の生活と織物

私が4年間住んでいた北欧フィンランドは、冬の季節がとても長い国でした。
首都ヘルシンキでは8月には木の葉が色づき始め、10月には初雪が降り、1月には気温が−15℃から−20℃にまで下がります。そして何よりこたえるのが、日照時間の短さでした。朝9時頃明るくなった外が午後3時を過ぎると薄暗くなってきて、子供も大人も朝暗い中を学校や仕事へ出かけ、夕方日がすっかり落ちてから家へ帰ります。そんな暗くて寒い厳しい冬の生活の中で、フィンランドの人達は実に暖かくて素敵な時間を過ごします。

クリスマスの近づく季節になると、家々の庭には手作りのイルミネーションがつき始めます。家の中ではキャンドルが灯り、クリスマスの飾りやカードがはやばやと飾られて暗い外の世界とは対照的に、クリスマスを待つ楽しい雰囲気に包まれてきます。
暗くなってきた室内を電灯の明るさで照らすのではなく、暖かくて控え目なキャンドルの灯を楽しむところにいつも感心させられます。
手作りの好きなフィンランドの人達は、クリスマスプレゼントも靴下や、手袋、帽子など自分で編んだ物を贈ったり、家に織機のある家庭も多いのでマフラーやテーブルクロスなどを織る人などが毛糸を買いにお店や市場へ出かけ、とてもにぎわいます。
手作りのものを愛する人達は、自分のお母さんやおばあさんの作ったテーブルクロスやタピストリー(壁掛け)を大切に使い、また自分達の作ったものを子供達や友達に贈り、それを伝えていくのです。私も、そんな自然で心が温かくなるような交流ができたらいいなと、いつも思うのでした。

1月、2月になると、本格的な冬の寒さが訪れ、外はすっかり雪景色になります。湿度が低いため雪はサラサラとして、気温が−20℃以下になる日にはキラキラしたダイアモンドダストといわれる現象も見られます。
厳しい冬の景色の中には、静かで美しく、音の無い音が聞こえてきそうな不思議な世界が広がります。私にたくさんのインスピレーションを与えてくれる風景です。
冬の厳しいところだからこそ、自然の美しさや人間の暖かさを改めて感じることができ、自分自身と向き合う時間を持つことができました。
北海道の自然にも、共通するところがたくさんあるのではないでしょうか。
冬の北海道の雪景色も見に行きたいなぁ、と思う今日この頃です。

佐藤 千織  03/01/00



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