2001.5.28号 07:00配信
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新しい生命が誕生するという事は、いつの時代でも、どんな生き物でも同じように喜ばしいものですよね。 私が初めて、彼女達の分娩に立ち会ったのは、結婚式の2日前。「ヒメ・テンペスト・ビジラント」という牛のお産です。夕方の搾乳を終え、夕食・入浴を済ませ、一日のリラックスタイム。実家が遠いため、結婚10日前からここに住み着いていた私にとって、思いがけない出来事でした。 哺乳類。分娩までの経過は”ヒト”とほぼ同じ。妊娠期間は「とつきとおか(10ヶ月10日)」と言われています。牛のお産で一番大事なのは、お腹の中の仔牛の状態が正常か異常かという事です。前足→頭→お尻→後ろ足の順に出て来るのが正常なのですが、まれに、頭からとか、お尻からとか。ひどい時は、片足しか無かったり、へその緒が首に巻いていたり。親牛の異常としては、子宮捻転(産道が捻れる)や微弱陣痛(いきみ方が弱い)などがあります。いずれにしても、異常と気付いた場合は獣医さんを呼ぶのが得策でしょう。 「ヒメ・テンペスト・ビジラント」の場合は、初任牛でしたが、全く異常のない分娩。家族だけで十分に助産出来ました。産道から出た、仔牛の前足にチェーンを巻き、滑車を取り付け、牛のいきみに合わせて引っ張る。前足に引き続き頭が。ここまで出ると後少し。見ている分には、容易なようだったので、私も参加。ロープに手を掛け引っ張ろうと思ったのですが、要領が分からないため息が合わずー。「危ないから退けて!」「はい・・・」2.3歩下がった所で、改めてその様子を伺うと、目に飛び込んで来たのは、体高150cmの牛のおしりから、芋づる式に出てくる仔牛。スポンっと抜けた時は何か爽やかな感動がー。その感動を味わう暇もなく、「水持って来てー」「体拭いてー」「一輪車用意してー」「滑車かたずけてー」など次々と。 「はい!」「はい!」「はい!」当時の爽やかな感動が薄れ、今では「おぉー」っと一言。これが慣れというものかぁ〜。この感動に鈍感になっても、返事が「はい!」から「おぉー」に変わっても、生命を預かる責任感というものは、決して薄れてはならない。そう言い聞かせて、これからも彼女達の生命の誕生を助産しよう。”生む”事の素晴らしさを知っている女性だからこそ持てる気持ちだと思ってー。 |