2001.7.23号 07:00配信
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私が北海道に渡り、初めて降り立ったのは、十勝のド真中”帯広”でした。故郷の駅から一人、北へ向かう列車に乗りー。少しの不安といっぱいの希望を胸にー。車窓から見える物は全てが新しく、そして優しく私を歓迎してくれてるようで、それだけで『ここ』に来た意義があると感じていました。例えば、残雪の上に見る 北きつねの影は生命そのものであり、遠くにくっきりと浮かび上がる日高山脈の稜線は自然のあり方を示している気さえしました。 『ここ』に自分を宿そうと思いを新たに日々を過ごしました。新しい生活様式・新しい友達、初めての食べ物や初めての言葉。その頃の私は、これらを受け入れるのに、一ヶ月とかかりませんでした。 変わりゆく大地の風景は十勝の四季をはっきりと感じさせてくれました。十勝に腰を据え、初めての5月、耕された黒土にどんな種が蒔かれるのだろう。初夏、その地には白と紫の可愛らしい花が見られました。実家に居る頃、ちっぽけな野菜畑に咲いていたあの花に似ているのですが、規模が違う。見渡す限りに咲いた花の下には、もうじき、コロコロとした美味しい恵みが生るのです。 沢山の人の手と進化する機械産業に身を預け、私達に恵みを提供してくれる大地。その恩恵に感謝し、謙虚な気持ちで畑に立つ。自然がヒトに与えてくれる数だけ、自然に返してあげたいと思う。勝るものは意思を持っているという事。『共存』を願う強い意思を持って『生かされている』という事を実感していきたいものです。初めて十勝に宿した頃を思い出しながら、10年余りの月日が過ぎました。今オホーツクの地で、大地と空と海のコントラストを味わいながら、やっと、過去を思い起こす心の余裕を持ち始めました。 |