2000.2.17号 13:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊

【番外編】

「北方圏フォーラム開催」by 西村淳



アドベンチャークッキング番外編
「参加要請」

時系列は前後して現代である。帰国して後、真面目に日々こつこつと?海上保安官生活を送っていた身に料理人魂を揺さぶられる要請が来た。昔々チームを組んでいた「紋別海上保安部」の小野氏から「2月にここで開かれる北方圏フォーラムの国際レセプションに料理を海上保安庁として出したいのだけれど、やってくれます?」

国際レセプションと言えば当然海外の人達が参加するパーテイーである。外国人と言えば、おじさんの頭には金髪のロシアンショーか、みめ麗しいフイリピーナの姿が飛び交う所であるが、その気配を鼻息の荒さで察したのか小野氏すかさず一言。「これは雪氷関係の科学者達が集う真面目な公式の集会です。平均年齢も50歳を越えているはずです。・・・何か変なこと考えていません?」

参加国を聞くとアメリカ・ロシア・カナダ・ノルウエー・韓国ETCと美人算出国(まだ言ってる・・・)が名を連ねている。「雪と氷と言ったら南極に最も近い科学者でしょ? あっちに行っていた時に友達になった人がくるかも知れないし、絶対参加するー!!!」小野氏にやましい心を見透かされて、キャンセルにでもなったらえらいことなので建前のみを前に押し出して、攻めることにした。

「越冬隊の時も中国やノルウエーの人達に喜んで食べてもらえたし、こんな事に対処出来るのは北海道広しと言えども俺だけでしょ?!」と極地の世界最高の料理人と自分だけで思っている私は、大風呂敷どころかブルーシートを10枚繋ぎ合わせた位広げまくって、自分がいかにこのパーテイーに参加しなければならないか、よく言えばプレゼンテーション。普通に言えば誇大妄想アジテーションを電話で切々と訴えた。納得したのか、あきれたのか「わかりました。 それでは参加要請をしておきますので、メニュー等原案をまとめて下さい。」と言うことで、今回のレセプションの参加が決まった。・・・が、しかしここまで来て気がついた。確かにノルウエーのDr、イェンシングや中国国立極地研究所のZou氏や李氏に食事を供した事は事実である。李氏とはドーム基地まで1000Kmの旅行を行い、「みずほ基地」や「ドーム基地」で小さなパーテイーを開いた。にこにこしながら「おいしい!」と言ってくれたはずであるが、中国語で喋っていたので、もしかして笑いながら「まずい!」と・・・・まさか・・・・。

今まで数え切れない程のパーテイ料理を担当してきたが、南極だけあげてみても生鮮品無し、水無し、食器無し、会場は雪上車の中等、普通の料理人なら「できるわけないだろ!!」とそのまま帰ってしまうような環境ばかりで、お食事会を行ってきたことに気がついた。日本でも、コンサートホールの喫茶店の調理場で結婚式の料理を作ったり、キャンプ場だったり、揺れる船の上だったり、もし「ハンデイキヤップ料理コンテスト」があったりしたら間違いなくグランプリを獲得できるようなロケーションばかりで、料理を作ってきた。今回の様に、準備期間十分・会場広々に加え、調理場も市民に解放されている「うまいっしょ工房」と言うスモーカーからアイスクリーマーまで業務用のマシンがずらりと並ぶ、必要にして十分以上の場所が確保でき、「これで恥ずかしい料理を作ったら絶対許さない!地のはてまでぶっとばしてやる」光線が紋別海上保安部から全身に浴びせられるのを感じつつ、親からもらった楽天的な性格と、プレッシャーとアクシデントが起こった時だけ、突如として現れる「道場 六三郎」のような応用力と、お菓子の腕はプロ級の愛妻みゆきちゃんのヘルプを頼りに、今回のレセプションに望む事となった。
「ファイト!! 一発??」


「うまいっしょ工房」
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