日常生活の中で何が一番水を使うのか、言うまでもなく風呂と洗濯だろう。ドームでは風呂で各自が頭や体を洗う日は自分の当直日と決まっていた。ほぼ8日に一回の割合である。風呂そのものは24時間循環釜なのでいつでも入れる。したがって月に一回私がパンツ一丁で、風呂掃除と、水の入れ替えをする日以外は風呂水の大量使用はないわけで、風呂は思ったほど大量消費の元凶とはならなかった。次に洗濯だが、小さな2槽式の全自動ではない物が設置されていた。
すすぎは溜式で、一回こっきり・・。その水は捨てないで次の人が又洗濯時に使用するシステムを取っていた。毎日みんなが洗濯するわけではないので、(林隊員と本山隊員の洗濯シーンを見た人はいない。)何日間か洗濯槽にそのままの状態もしばしばあった。ウイルスのいないドームとはいえ、日本から持ち込んだ常在菌はあるわけで、ほどよい室温と湿気でそのままにしておくと洗濯槽の水はどんどん細菌の培養池に変わっていくと思われるが、洗濯したパンツをはいて、細菌感染を起こした隊員はドクターがなにも喋らなかったので多分いなかったと思われる。もしいたとしても、「風呂に入らないでパンツも変えてないからだヨー」のシュプレヒコールの嵐で、多分葬られたことだろうが・・・。
こんなに節水・節水の中で一年間も暮らしていると、骨の髄から「節水マシン」に変身するようで、越冬が終了して、「しらせ艦内」でシャワーを浴びていても、海水風呂の湯船から海水をジャーっとこぼしても、海水循環式の水洗トイレで爆弾投下作業に従事していても「とんでもない悪事を働いているのかもしれない!!」強迫観念にいつも迫られていた。今の日本のように、飲料水をそのまま下水道に流すなんて事は、もしかしたらとんでもない間違いをおかしているのでは・・なんて事を遠い南極の奥地で、うらやましさ半分でいつも考えていた。
「風呂掃除」
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
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