プランを進めて行く上において、原型となるのは過去の経験である。それをまず一つずつ思い出していった。まずは最初に行われた「ミッドウインター記念大晩餐会」である。昭和基地では代々ひとけたの隊から行われているそうで、参加者全員正装でフランス料理のフルコースを当番の隊員をにわかギャルソンに仕立てて行う。30次隊の時も「東条会館」から参加したフレンチのシェフ「鈴木隊員」を中心に挙行された。
半蔵門にある超一流の結婚式場「東条会館」では出発前からこれが越冬隊に参加する料理人ではメインイベントと言い含められてきているようで、「鈴木隊員」もかなり根性を入れて作っていた。「フォワグラのパイ皮包み」に始まるフルコースは「金を払わなくてもいいんだ。」と思うととてもおいしく、オードブルとパンのおかわりをがんがん要求し、おまけにこの時のために開けられたドンベリとロマネコンテイとシャンベルタンをこれまた「只だからー」の浅ましい根性でがふがぶ生ビールの様に飲みまくりボトルの追加をこれまた要求し、香り豊かに焼き上がった「舌平目のムニエル」や「カリフラワーのサラダ」まで進む頃には胃袋の方が爆発寸前で、おう吐する一歩手前だった事をふと思い出した。
・・・鈴木隊員ごめんなさい・・・・
「ドームはさー9名しかいないし、無理にフルコースやらなくてもいいんじゃないの?」と早くも逃げ腰・さぼり癖の私の提案に、林隊員曰く「いや南極では伝統にとらわれないと言っても、ミッドウインターでフランス料理のコースをいただく事を楽しみにしている隊員は私も含め多いはずです。昭和基地と比べると設備や食材も制限を受けるでしょうがぜひともお願いします。」と正論を・・。
正論・正論・正論ならばスリランカと軽口を飛ばしても仕方ないので、「はーいお受けしまーす。」と軽やかに答えた。でも普通のフレンチコースを作ってもあくの強い自分としてはおもしろくないのでひとひねりしてドーム基地で人気番組だったビデオ「王様のレストラン」にちなんで山口智子が作っていたメニューの中からみんなのリクエストを聞いて再現する事にした。リクエストの結果一番多かったメニューが「魚のはらわたパイ」とは・・・・。
「昭和基地 フレンチフルコースの風景」1
「昭和基地 フレンチフルコースの風景」2
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
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