休日のはずだったフランス料理の次の日、誰が考えたのか「２４時間麻雀大会」と言う麻雀放浪記のラスト勝負のようなアホな事をやり、延々とつき合わされる羽目になった。半雀を行い、１位だけが残るルールで始まったが、トップの連続でずっと居座ることになった。いくらか握ったら次第に貯まっていく貯金ににんまりするところだが、南極観測隊の数少ない禁止事項に「金を賭けてのばくち禁止」があり、これは厳密に守られているため、いくら勝っても点数が貯まるだけで懐はいっこうに豊かになってくれない。
これはつらい。一言で片づけると馬鹿みたいである。いつもは慎重におそるおそる牌をきっても当たってしまう場面で、なぜかすらすら通ってしまう。そしてこれ又相手が「なんでそんなの出すの」と聞きたくなるような当たり牌をどんどん出してくれる。側でゲームからはずれた福田ドクターが懐かしの名画「にあんちゃん」のビデオを見ながら「いやーこの時代の日本人て貧しくて、体格も貧弱だけどエネルギーに満ちあふれているねえ。人間て少しくらい逆境にあった方が元気いっぱいに生きていけるのかしら？？ねえ西村さんどう思う？？」と他人の逆境をすぐ目の前にしてまったくはずれっぱなしのご高説を一言・二言・三言・四言・・・・・。
「あーうるさい！あっちへ行って酒でも飲んでたらー」と振ってもこういう時のドクターは人間が鷹揚なのか鈍感なのか、さっぱり理解してくれない。普段はペースがすっかり狂い、滅茶苦茶になってしまう場面だがこの夜に限ってパソコンにおまけで付いている麻雀ゲームの様に打つ手がすべて自分の流れに来てしまう。結局解放されたのは朝の５時だった。
ＧＰＳゾンデの打ち上げにもつき合い、ミッドウインターの期間中一番安らかに送れるはずだったこの日は結局一番つらい日となった。
「ミッドウインターのＧＰＳゾンデ深夜観測」
注意：写真はすべて国立極地研究所に属します。
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