「誕生会」も盛会の内に進み、恒例のスピーチタイムを迎えた。「上品でしかも静かに」を人生訓として過ごしているドクターは、一見「下品で野卑なでかい顔」にワインが回ったペロペロの表情で喋りだした。以下はその際撮影されたビデオからの抜粋である。
「えー私こと福田は日本より遙か遠く隔絶されたこの南極の地で本日、正確に言うと明日46回目の誕生日を迎えます。男も46回目の誕生日となるとさほどうれしいものではなく、又順番が回ってきたかと淡々と受け止めるだけであります。本日の会を開催してくださいましたドーム越冬隊の皆様、並びに大好物ばかりを並べて体重78kgを維持もしくはオーバーさせようとのたくらみが見え見えの西村隊員・西平隊員そして私には少々甘すぎましたが豪華ケーキを用意してくださいました平沢隊員には心より深く感謝の念を持つ次第です。
考えまするにこのドームの地で暮らして早半年余り、言いにつけ悪しきにつけいまだかつて私の人生に登場してこなかったと断言できる皆様の中で生きてきたわけですが、川村隊員や西村隊員の心温まるご指導、ご鞭撻を受け世間では、しごき・いじめ・陰口・皮肉と言っているようですが、とにかく格段にたくましくなってきた自分を感じる今日この頃です。明日からも医者としてではなく、人力タフネス労働マシンとして、生きていきますのでよろしくお願いいたします。」
と多分喜んでいるだろうなあーと推察できるスピーチで誕生会はお開きとなった。その後、食堂にずっと飾ってあった七夕の短冊(竹竿にお菓子用の柏の葉の砂糖漬けを笹の形に切って飾り付けた物・・・林隊員製作)をオゾンゾンデの気球に結びつけて南極の空に放球した。白夜が始まる前の真っ暗な空にそれぞれの願い事を書いた短冊はフラフラと上がって消えていった。それを見ながら当直の「西平 盆隊員」とてつもない事を口走った。「明日からどうするんだろーな??燃料庫に後南極軽油5本しかありませんよ・・・・・・・・」
「ドクターのメッセージ」
「七夕の短冊」
「七夕の短冊と放球」
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。
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