ドック泥酔に続き今度は「盆」がダウンした。BARでいつものように軽く寝酒をやった後「さて寝ましょう。」と思ったら急に吐き気がこみ上げてきたのだとか・・・。発電棟の簡易トイレに行ってみると、「盆」がまん丸い尻を外につきだし盛大に吐きまくっていた。一瞬頭を横切った物は「食中毒では?」だった。もし集団食中毒だったとしたら、日本では即数日間の営業停止である。ここではそれは不可能で、もし日本から持ってきた食料が汚染されていたとしても、それを食さなければ餓死してしまう。だがここは超低温地帯のドーム基地。ウイルスさえも生存することの出来ない土地である。
冷凍食品は100%外気にさらされているので、「腸炎ビブリオ等の菌がもしいたとしても死滅しているだろう」と福田ドクターがコメントしてくれた。周りを見渡しても、他の隊員諸氏は酔ってはいるものの腹痛を起こしている気配は見られない。「西村さん 何か悪いこと考えていない?」ドキッとした。栄光に満ちあふれたシェフ人生を食中毒なんかで汚したくはない。「いっそ盆、証拠隠滅で始末してやろか・・」と心の中にわき上がってきた黒い陰謀をドクターに見事見破られた。
「西平 盆」九死に一生を得たわけである。とにかく食中毒は闇の彼方にめでたく去り、次の日からはドームのICU、普通に言えばドクターの居室兼診療所兼事務室で治療が行われた。治療法は「点滴と酸素濃縮空気の吸飲。」疲れ・低酸素症等に有効な治療法である。福田ドクターの公式見解は「疲労からくる低酸素症及び脱力症」手っ取り早く言えば、「酒の飲み過ぎから来る自家中毒」だった。私の心を乱した罰に「紙パック入り月桂冠」を点滴パックと入れ替えてやろうと思ったがそれをやると盆は「確実に死ぬ」と言われたので、あきらめたがホント少しくらいは入れてみたかった。
月桂冠の点滴?
治療中
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。
|
|