1997年11月3日「ドーム補給隊」が昭和基地への帰路に就いた。たくさんの笑いと、人に出会う喜びと友情と貴重な補給物資を運んで来てくれた仲間達が去っていく日がついに来てしまった。
「昭和補給隊メンバー」である。
山内隊長・・38次南極観測隊総隊長である。あだ名は「殿下」上品さと優しさで観測隊を包み込んでくれている人物。
東隊員・・・京都大学から参加の地磁気の専門家。ご高齢のため帰りは骨になって戻ると見られたが、元気いっぱい最後まで笑い声が基地中に響き渡っていた。親善麻雀大会で、勝負師の資質で冷酷に役満をあがったのもこの人。
竹内隊員・・・山梨大学から参加のオーロラの専門家。時期的にもうオーロラは出ないので今回の旅行中はもっぱら観測や調理のアシスタントとしてご活躍。温厚な人柄は旅行隊の貴重な潤滑剤となったようである。あだ名は「たけちゃん」
木津隊員・・気象庁から参加。ジムで鍛えた屈強な体力で、定常観測を黙々とこなした。「寿司割烹 喜多田」の脇板としても活躍。あだ名は「きーちゃん」
関口隊員・・・大原鉄工所から参加の雪上車のプロ。 夏旅行でもサポート隊で参加ドームに来るのは2回目である。旺盛な食欲は見る人を幸せな気分にしてくれる。あだ名は「セッキー」
田中隊員・・・海上保安庁から参加の通信担当。我々がドームに出発するとき無線で「北の国から」を熱唱し、感動のプレゼントをくれた人である。海の機動隊「特警隊」出身の頑健な躰からターミネーターならぬターミーと呼ばれる。
小関隊員・・・機械担当で頭を似合わない茶髪にしたため「チャパ」と呼ばれる。優しい人柄で観測隊員の「いやし君」として貴重な存在。
北田隊員・・・調理担当。和食の板前さん。あだ名は「店長」。あくの強いキャラクターは隊員間に笑いと、そして嵐をもたらす。給料明細を見比べて「国家公務員は給料が高い!! 訴えてやる!!」といつも言っていた。
以上8名が次々と雪上車に乗り組み、出発のクラクションが鳴らされ、夕刻の地吹雪舞う「ドーム基地」を次々に出発していった。竹ちゃんが泣いている。 ターミーが泣いている。店長が泣いている。そしてドーム隊員は・・・笑っていた。「昭和補給隊」は大きなオペレーションの半ばを成し遂げ、この辺境の地で暮らしてきた仲間の事を想い、そして又置き去りにするすまなさ等が交錯して、頬を伝う涙になったのであろうが、それを見送る我々は、別れる悲しさ。寂しさよりも、ようやく終わった長い冬、そしてやっと最後が見えてきた越冬生活に対する達成感が胸の中から沸き上がってきて、37次隊がここを後にしたような寂しさはなかった。
ハイになっていたのである。涙・涙の「昭和補給隊」は笑顔で見送る「ドーム越冬隊」の見送りを受けて地平線の彼方に消えていった。そして私たちは又9名になった。
あー行っちゃった・・・・。
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
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