ドラム缶を掘り出して、そりに積み別の場所に並び替える新しい拷問じゃなく作業が延々と続いている。36次隊から外にランダムに放置されていたゴミ・廃油ドラムの整理作業である。その数200本以上!!!気温はー35℃前後なのだが、羽毛服を着てドラム掘り出し作業をやっているとすぐ汗だらけになってしまう。
脱いでTシャツ一丁でやると、最初は快適なのだが、やがてシャツが凍り付きばりばりの糊をつけすぎたYシャツのように硬化してくる。風の噂では39次隊はS16を出発し、ドームに向かい始めたらしいが、当面立って片づけなければならないのはこの半ば埋もれかけたドラム缶の整理作業だ。おまけに今日はイエスキリスト聖誕祭、早く言えばクリスマス・イブだが、午前中の段階ではそんな気分にとてもなることができなかった。再現もない作業を延々としていると、腹が立ってくる人と、黙々とこなしていく人がいるようだが、どうやら私は前者みたいで、この他人の残したゴミを整理していると段々ムカムカしてきた。
娘の言葉を借りると「むかつく」と言う奴か・・・・・・。「きちんと前もって分別して整理していけばなんと言うことも無いのに・・・藤沢!!ところ!!うまくない物ばかり造るからこんなに生ゴミばかり出るんだ!!」と何の罪もない36次と37次の調理担当隊員まで心の中でののしっていた。それでも肉体労働が終わると爽やかな汗とともにそんな感情はどこかへ飛んでいき、午後遅くではあるがぼちぼちとクリスマス準備を始めた。最初はターキーか北京ダックを焼き上げようと思っていたが、ブルーベリーソースを造るのは面倒だし、北京ダックも水飴と酢を塗って干しておくのも忘れていたので、「今日は忙しかったからー」で気持ちよく手抜きをすることにした。
ケーキはオーストラリア製の冷凍完成品でごまかし、チキンとポテトと伊勢エビをオーブンでいっぺんに焼き上げ、それぞれグレービー・バター・アメリケーヌの3種のソースをかけてごまかした。いつもは甘すぎて、口の中が○印になる強烈なAU製の冷凍ケーキも、外での長時間肉体労働をした体にはそんなにくどくなく、ほのかな甘さだった。
ともかくこの「手抜きイブ」のMENUは
・ローストチキン・グレービーソース
・ポテトリヨネーズ
・舌平目のムニエル・バターソース
・伊勢エビのロースト・ソースドアメリケーヌ
と見る人がみればバレバレの内容だったがドームの住人は「忙しかったのによく造ったねー」と称賛のエールを送ってくれた。めでたし!めでたし!
廃棄ドラムの山
イブの食卓
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
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