はたして無事に着くかと思われた「先発隊」だが、なんとかS16までたどり着くことができた。
専門メカニックがいないにもかかわらず重大なトラブルに見舞われることもなく、3台の雪上車は南極の雪原を1000km走って下界に戻ってきた。途中でSM107号車のオルタネーターのブラシが破損し、一時は雪上車を一台放棄か・・・という事もあったが、リミッターをはずしてエンジン直結にしたことにより暖房こそ利かなくなったものの、走行を続ける事が出来た。これも一年間知らず知らずの内に蓄積されていった「応用力とチームワークとパニック対処法」を発揮出来た成果だと思う。
これを除けば帰路旅行はきわめて快適に進み、朝は39次隊報道オブザーバー「斉藤 氏」がたてる抹茶を味わい、夕食は、焼き肉・すき焼き・刺身の盛り合わせ等を作り、福田ドクターに至っては「クロスカントリースキー」を楽しむなど肉体的にも、精神的にも余裕を持って、南極最後の旅を楽しんだ。
S30では、「しらせ乗員」との一年ぶりの再会を果たし、私達のあまりの変わり様に海上自衛隊諸氏のびっくりした顔が印象的だった。
ヘリコブターにピックアップされた際、風向を知らせるのに大型発煙筒を炊くのだが、手に持って歩いている途中、転んで安全ピンを抜いてしまい大いにあせった事も今となっては笑い話になってしまった。
ヘリコプターはあっけないほど簡単に我々を文明社会に引き戻してくれた。上空から見る南極大陸は、あくまでも広くそして清浄で、私の様な凡人が、まがりなりにも「南極観測隊」の一人として、ここで過ごすことが出来たのも、この懐のふかい大自然だったからこそなどと、ヘリコプターの乗員からもらった缶コーヒーのほろ苦さ・甘さとともにぼんやり考えていた。
ヘリコプターがやって来た
上から見たS16
カムバックしらせ!!
清浄な、そして清浄な。
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。
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