2001.2.17号 07:00配信


織物作家・佐藤千織さんのコーナー
千織の織物工房
Chiori Sato Textile Workshop
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「矩形の森・記憶の光」〜空間を体感するアート展
五十嵐淳・佐藤千織展をふりかえって


今回の「矩形の森・記憶の光」展は、建築とテキスタイルという違う視点から、ひとつの空間を構成し表現するインスタレーション作品です。作品を「観る」だけではなく、作品の中を自由に歩いたり、触れたりしながら空間を思い思いに「体感」できる空間創りをコンセプトとして制作しました。

建築的な側面を見せながら、柔らかな光を放つ外観。私たちの遠い記憶を呼び覚ますような白い柱、白い床。白い布に覆われ、整然と並んだ柱が印象的な空間です。

柱と柱との間隔は91cm(3尺)。私たち日本人にとって馴染みの深いサイズで、120本の柱が等間隔に並びます。

天井を覆う雲のような雪のような薄い布が、歩くだびにふわりふわりと動く。まっすぐに歩くことのできない、迷路に迷い込んだような不思議な空間が広がります。

床に並べられた30個のアートピースは、すべてアクリルボックスの上にのせられています。宙に浮いているように見える織物作品の、白い床に落ちる淡い影が、幻想的な雰囲気を創りだしていました。

20cmx20cmの織物作品が等間隔で整然と並ぶ空間。

角度によって変化する風景。植物のようにも、雪のようにも、風のようにも見える織作品が並びます。

30個の織物作品は、色や糸の密度などひとつひとつすべて違った表情を見せます。空の色、夕日の風景、雪溶けの草原。身近な自然の見せる景色と、作品のイメージが重なった時、観賞者はそれぞれの風景の中に立っているように感じるでしょう。

高さを変えて見ることで、柱や糸の色の見え方や感じ方も変化します。実際の面積よりも広がりを感じさせる空間で、森のなかを散策しているように感じる空間です。

紙紐を基調にして、木綿などを織り込んだ作品。素材や色の小さな変化は、心の中の懐かしい風景や記憶を呼び覚まします。


今回の作品展では、「観る」だけの美術作品ではなく「体感」する空間そのものを作品として展示しました。アートピースだけがアートなのではなく、光や空気や、鑑賞者を含めた空間が作品となる楽しさを見出していただけたと思います。建築とテキスタイルという違った分野でのコラボレーションを通じて、インスタレーションという空間構成の新しい可能性をみることができました。美術作品と観る人とのかかわり方を意識した作品を、これからも創っていきたいと思っています。

最後に、今回の北見での作品展開催に協力してくださったたくさんの方々と、寒い中会場にいらしてくださった方々に心から感謝したいと思います。



2001.2.15 佐藤千織


五十嵐淳さんのレポートはこちら


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