2001.8.13号 07:00配信


大草原からのぷちメッセージ

でっかい体 ちっちゃい命

(by いくちん)


出生したばかりの仔牛を『初生牛』と言います。この初生牛の体重は平均40〜50kg。その後、すくすく(?)と成長し、初めての人工授精時(生後16ヶ月頃)には、300kg〜400kg。更に、初産時には500kg台に。2産、3産になるにつれ、700〜800kgになります。この成長ぶり、人間では考えられないですよね。しかし、動物の宿命。著しい成長の果てには必ず訪れる“死”との対面。今回は彼女達の最期についてお話します。

ホルスタイン種から生まれた初生牛は、♀ならば自家生産牛として育成され、♂ならば肉牛として、業者に引き取られます。哺乳中の仔牛は、ミルクの量や気温の格差で感染症・肺炎など思わぬ状態に陥り、死亡する事もあります。出生から6ヶ月ほど経つと、登録書申請や家畜共済保険などの手続きを行い、はれて牧場の財産になります。この時期を無事に過ごすとほぼ安心。少々体調を崩したりしても、大事には至らないため、粗末な飼料で常時放牧状態になります。
1才前後になり体高や体身が満足に成長した育成牛は成牛になるための最初の試練、受精・受胎をむかえます。これに成功した牛は、約10月10日で分娩。産後は体調を崩しやすく、2週間程の飼料給与は丁寧に行います。

産後の疾病の多くは、起立不能。これを牛飼い用語で「腰抜け」と言います。つまり、“立てない”という事。立てない牛は搾れない。前産では、たくさん牛乳を生産していた牛でも、搾れなければ飼っている意味がありません。廃用になります。この他、廃用にはならずとも、食欲不振や第4胃変異(牛には4つの胃があります)などで獣医さんのお世話になる事があります。一番恐ろしいのは、感染症。ご存知の方も多いと思いますが、ヨーネ病や口蹄疫などに感染した場合は、当事牛だけではなく、牛群全てが廃用の対象になります。

昨日まで元気に餌を食べていた牛が、朝グッタリしていたり、寝起きが悪く起き上がれないため、おなかにガスをパンパンに溜めて硬直している事があります。過去の無残な記憶には、産道に仔牛を挟んだまま母子共に硬く冷たくなっていた事もあります。成牛なら700kg以上にもなる、動かない『でっかい体』を外に出す時の辛さ。彼女達の魂を労い祭る行事を年に一度行っています。彼女達の命をもらって私達は生かされているのです。心からの“ありがとう”を言いたいものです。


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