2001.9.10号 07:00配信


大草原からのぷちメッセージ

牛と猫の奇妙な友情!?

(by いくちん)


盛夏の頃は、観光客で賑わうオホーツク地方ですが、11月ともなると小雪が降り始め、朝晩の冷え込みには、身の縮む思いがします。その頃になると、当牧場でも収穫期を終え、朝・昼・夜の給餌と一日ニ回の搾乳のみで、それ以外の時間は家の中に閉じこもりがちになってしまいます。

そんな退屈な日々を過ごしていたある日の朝、眠い目をこすりながら、牛舎の戸を開けると、どこからともなく牛ではない動物の鳴き声がー。聞き覚えのあるその鳴き声は、処理室の机の陰から最も大きく聞こえる。早速、机を移動し、奥の方を覗いて見るとー。突然、私の足にまとわりつく仔猫。寝ぼけまなこのせいか、白と黒のその仔猫が、ちょっと小さ目の仔牛に見えて驚いた。限られた目を見開き、よーく見ると、やはり猫以外の何者でもなかった。

酪農地帯に住み着いている野良猫は、どれも皆ヒト嫌いなようで、追えば追うほどに逃げて行く。しかし本日のお客様は、逃げるどころか、ヒトの足に絡み付いて来るほどになついている。きっと、どこかで飼われていたのだろう。こんな寒さの中に捨てられたのかと思うと可愛そうで、結局、黄色のコンテナの中が、“ねこ”の住まいになった。このお客様、居候のくせになかなか図々しい。飼料のコーンを選んで食べ、暖かい敷き藁の真ん中にゴロンと横になる。それでいて愛嬌は良く、「お〜い!ねこ〜」っと呼ぶと、飛ぶように駆け寄り、ミルクをせがむ。牛飼いの私達は、“ねこ”のために捨てるミルクを常時、器に注いでいた。

いつの頃からか、“ねこ”の住まいは、黄色のコンテナから牛床の牛の隣に変わっていた。決まって、デモン・アイディアル・スターローンの隣。彼女は牛群の中でも、最も温厚な牛で、仔猫が傍に来ると母親のように、体を舐めてやっている。その光景に、なんとなく心を和ましていたのだが、突然の惨事が“ねこ”を襲った。牛が立ち上がった瞬間、その前足で“ねこ”の小さな足を踏んづけてしまったらしい。「ンギャオ〜!!」と聞いた事もない声で鳴く仔猫。驚いて駆けつけるとジタバタと狂ったように、もがいている“ねこ”と血の流れ落ちる小さな足が目に入った。・・その後も懲りずにデモン・アイディアル・スターローンの隣が“ねこ”の住まいだったが、春を待たずに巣立って行ってしまった。今頃は、もっと良い条件の住まいで、相変わらず図々しい愛嬌を振りまいている事だろう。傷ついた片足を引きずりながらー。



インデックスにもどる

※ご意見・ご感想は「編集長の掲示板」へお寄せください。



Home
(C) 2001webnews
ご意見・ご感想・お問い合わせはwebmaster@webnews.gr.jpまで