2001.10.8号 07:00配信
酪農牛の飼養方法は、大きく分けて2つ。昔ながらのスタンチョン方式(一頭一頭の首をつないで並べて飼う方法)と近年多くなってきたフリーストール方式(広いスペースで自由に解放して飼う方法)があります。どちらもメリットとデメリットがありますが、当牧場は前者のスタンチョンにつなぐ方式をとっています。 牛を個々につなぐので、自分の餌は自分のもの。そのため確実に口にできる。弱い牛にとって、『餌を食べる』という面では、こちらの方が都合が良いのかもしれません。牛にも上下関係があり、強い牛の前に弱い牛は太刀打ちできませんから。しかしこの飼い方では、牛は運動不足になります。足腰が痛み、寝起きが悪くなったり、自由に動けないという事が、次第にストレスに変わります。ストレスは牛乳の出を悪くし、食欲もマイナスになります。これを克服するために、当牧場では毎日、牛舎横の牧草地に牛を放牧しています。朝の搾乳が終わったら外に放し、昼の給餌には牛舎に入れるという様に。牛を放牧している間に、牛床の掃除をし、敷き藁を変えます。牛舎の中は常に清潔に心がけています。 放牧時は、外で青草をたっぷり食べ、自由にのんびり遊んで来た牛達は、個々の牛床に戻ると更に、蓄主の与えた餌を食べます。青草だけでは良質の牛乳は生産出来ません。脂肪や蛋白・無脂固形のバランスの取れた良質の牛乳を生産するために、蓄主は飼料分析を何度も繰り返し、牛の状態に合わせた餌と量を与えているのです。業者に依頼した飼料分析で得られるデータは、飼料の成分のみで、その飼料の原料が何であるのかは、知る由もありません。ただ、成分が整っているというデータと、牛の体調の良さを見比べて、その飼料の与え方を『良』としています。 まして牛達は、自らが口にするものを選ぶ事など出来ません。「今日は甘い物が食べたいわ」とか、「体調が悪いから、あっさりしたものが良いな」などと言うわけはなく、ヒトが与えた餌を喜んで口にするのです。餌の与え方一つで、牛乳の出方も違い、果てには体調を壊し一生を無にする事もあります。蓄主にとって、餌を選ぶという事は、牛達にその権利がない分、牛の生死をも預かる重要な仕事なのです。決して適当な気持ちで出来るものではないという事を分かって頂けたら幸いと思います。 |