2002.1.28号 07:00配信


大草原からのぷちメッセージ

お世話になった牛達へ

(by いくちん)


離農が決まってから資産である牛達を処分するまで、色々な思いが脳裏をかけめぐりました。私が牛飼いになってから9年間の彼女達との関わり・ユニークなエピソードや感動した体験。全てが牛主体だった私の生活が、この短期間に180度違う方向へ変わろうとしているかと思うと、どうにも複雑な気持ちでいっぱいでした。

牛を処分するという事は、思った以上に労力のいるものです。就農より離農の方が大変だというのは、そこに振り払えない感情が存在するからなのでしょうね。お世話になった牛達をきれいに洗い、毛刈りをしたりブラシをかけたり。給餌や搾乳も、普段以上に丁寧に行いました。70頭の牛全てに感謝の気持ちを込めてー。

まずは、農協担当者立会いのもと、登録書と照らし合わせ牛の確認をします。乳用牛として売るのか、廃用肉牛として出すのかを決め、その後、乳質検定を行い価格をつけるためのデータを集めます。それを受けて、市場で売るための最低ラインでの価格を想定します。自分が気に入っていて丹精込めて育てた牛でも、乳質が悪かったり、体形がいまいちだったりすると安く見積もられます。「私と牛との関わりは値段ではないのよ!」っと叫んでみても、そこには過程はなく結果のみです。こうして付けられた価格を元に市場で競り合う事になるのです。

出荷の当日は、早朝から家畜車が来て一頭一頭を確認しながら積み込みました。4台のトラックがフル回転で我が家と市場とを往復しました。中にはガンとして動かない牛や、放牧地へ逃走する牛もいますから、全てを乗せるまでには3時間もかかりました。主のいなくなった牛舎は、静寂の域でした。初めて見るその光景を目の当たりにして、改めて大変な事業だったんだなぁ〜と感じました。たちまちに空虚さが込み上げてきましたが、この牛舎が再び牛で活気づく事はなく、走り始めた現実・自ら選択したスタートに素直に従い進んで行こうと思いを新たにしたのです。



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