2002.3.7号 07:00配信


大草原からのぷちメッセージ

長年の重み

(by いくちん)


確定申告が近づき、バタバタと書類を作り始めています。今はパソコンで申告書を書く事が出来るようになったため、わりとのん気に構えていましたが、今年は離農という大きな事業がありましたので、その額は多大なもので
す。

必要な書類を取るため、久々に牛舎へ足を運びました。じいちゃん達の住む実家には何度か行っていたものの、牛舎に行くのは離農後初めての事でした。牛舎への道を歩きながら、「あぁ、ここを毎日通っていたんだ」と、やけに神妙な心持になってしまいました。隣の牧場の放牧地に放された牛達を見上げ、「牛って、こんなにデカかったかな?」などと思いながら牛舎のドアを開けました。

きれいに片付いたそこは、全く未知の場所のようでした。引越しやこれからの事でバタバタし、お世話になった牛舎の事など後回しにしていた私は、その変わり果てた牛舎の様子を見て恥ずかしさを覚えました。恐らくじいちゃんやばあちゃんが、数十年の様々な思いを胸に片付けたのでしょう。私にとっても9年間の活動の現場だったのに、何故もっと丁寧に片付けなかったのかと悔やんでしまいました。数え切れないミスと、沢山の経験・学習の場を与えてくれた牛舎に敬意を込めて、それを形で返すべきだったと思いました。

牛のいない牛舎、牛乳の入っていないミルククーラー、数十年しみ付いたはずの牛の匂いさえせず、ただカビくささだけが充満していました。「もう一度ここに牛を戻し、牛乳の甘い香りでいっぱいにしたい」そんな事を考える勇気もありません。いつか子ども達に、「ここで母ちゃんは牛飼いをしていた」っという事実を堂々と語れたらと願って牛舎を後にしました。



インデックスにもどる

※ご意見・ご感想は「編集長の掲示板」へお寄せください。



Home
(C) 2002 webnews
ご意見・ご感想・お問い合わせはwebmaster@webnews.gr.jpまで