2002.7.29号 06:00配信
確かに暦の上では間違いなく7月。しかも極めて8月に近い、7月の末です。各地で夏祭りやら花火大会やらが開催され、子ども達は夏休みに入り、朝から高らかな声で走り回っています。“ひまわり”や“あおい”など、夏を代表する花々も咲き乱れておりますし、畑では麦刈りのコンバインが鈍い金属音を響かせています。 どこもかしこも夏一色。でもどこか例年の夏とは違うようです。この季節になって、いまだ25度の夏日を越えた日が数えるほどしか訪れていない、というのはどういう事でしょうか?のお天道様だけが出遅れ、まだ雲の中でお休みしているようですね。 子どもの頃の夏の風景を、懐かしく思い出します。縁側に足を垂らし、みぞれのカップアイスを食べながらアリの列を眺めていた事。サマードレスの下に水着を着、自転車にまたがってプールに向かった事。動きが止まったように空気が歪んだ風景。かさなりあった木々の葉っぱが、まるでスローモーションの様。電信柱に集まるカブトムシの群れや、窓を開け放した部屋の蚊帳(本当に蚊帳を吊るして寝てました)。山水とコケの混ざった青臭い匂い。蚊取り線香の煙。「暑い」と声を出すのもダルいほどの、本当に暑かった夏休み。 この頃はなにか、忙しく走り回るのが当たり前のように過ごしてしまいます。世の中がみんなそうしているから・・それでも草の匂いを思いっきり吸い込んだり、“あおい”の花びらを鼻に乗せて「コケコッコー」と笑ってみたり、すいかの種をアリの巣の中に押し込んでみたり、そんな柔軟な感情で夏を過ごしてみたいものです。夏が体の中に入り、そして通り抜けていく感覚を味わいたい。夏の風景の一つになってしまいたい。そんな暑い夏が早く訪れると良いですね。 |