2000.1.21号 20:00配信


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ネパールびっくり体験記

60人の大家族



ネパール盲人福祉協会での点字本製作。それが、私の主なボランティア活動だった。でも、それ以外にも入り浸っていた所があった。「チルドレンズワールド」という児童福祉施設だ。ここには、毎週、仕事の合間に通っていた。ってゆーか、仕事をさぼって遊びに行っていたというのが正しいかな。

「チルドレンズワールド」は、ドイツからの出資による、私設の児童受け入れ所だ。様々な家庭事情を持つ子供達が、60人程暮らしている。スタッフは皆ネパール人。先生役が5名。家
事手伝いが3名。建物は3階建てで、クリーム色を基調としたかわいい造りをしている。最初は孤児院だと聞いていたので、レンガ造りの古い建物かと思いきや、なんのなんの、お洒落なとこじゃん。

初めてここを訪れたのは、1月半ば頃かな。盲人福祉協会のトゥルーシィさんと、元ボランティアの由美さんと行った。由美さんは、ネパールが気に入っちゃって、今度は親子で旅行に来たのだそうだ。旅行といっても、カトマンドゥの友達に会っただけで、特に目新しい所には行ってないみたい。新婚家庭に呼ばれたり、現地の友達とお喋りしたり。他愛のない時間が楽しいのだと言う。ふっふっふ。彼女も、ネパールの魅力に取りつかれているようね。

招かれるままに中へ入ると、子供達が集まってきた。後から後からどんどん増えてきて、最終的には、部屋はぎゅうぎゅう詰になってしまった。みんなキラキラした瞳で私達を興味深げに覗き込んでは、くすくすと笑い合っている。暫く待っていると、所長さんが来て、流暢な英語で私達を紹介した。「彼女達は、日本からいらっしゃっいました。こちらの方は今、トゥルーシィと一緒に、NAWB(ネパール盲人福祉協会)で働いています。さ、自己紹介をどうぞ。」「えーっと、ナマステ。中塚友子です。ネパール名はまにしゃです。みんなに会えて嬉しいです。」と、あやふやなネパール語で自己紹介をした。「まにしゃだって?あの映画女優と同じ名前だ。」「まにしゃって呼んでもいい?」と、みんな一斉に反応した。どうやら私のネパール名は、どこでも受けがいいようだ。これで緊張が解れたのか、子供達は次々と英語で質問を投げかけてきた。

「日本の何処から来たの?いつまで居るの?」
「日本人って何を食べるの?ごはん?それともパン?」
「何か日本語を教えて欲しいな。あと、日本の歌とか。」
「学生?それとも社会人?働いてるなら給料いくら?」
「年いくつ?結婚してるの?子供は?兄弟は何人?」
「結婚してないなら、彼氏はいるの?どんな人?」
「日本人は、お金持ちだよね。貯金はいくら持ってる?」
「日本人とネパール人と、どっちが好き?」
「ヨーロッパ人ってどう思う?ドイツ人と会った事ある?」
「日本とネパールの違いについて教えて。」
「ネパールが気に入ったら、ここでずっと暮らさない?」

にこにこ笑って答えていた私達だったが、その内段々、厳しくなってきた。英語のヒアリングだけでも、こっちは大変なのに、即答しにくいフランクな質問の多いこと。こっそりトゥルーシィさんに、「お金の話なんてOKなの?」と聞いたが、「すれば」というつれないお答え。むむむと思ったので、こっちから逆に質問攻めにし、何とか切り抜けた。と、突然、由美さんが嬉しそうな声を上げた。「ねえ!この子なんかナインティナインの岡村君に似てない?」言われて見ると、成る程似てる!もう、そのまんま!見れば見るほど似てる!あはは、おっかしー!大受けまくりの私達だったが、みんなは、きょとんとしている。「彼、日本のコメディアンの岡村隆史って人にそっくりなの。」と教えると、子供達はあははと笑い出す。照れながらも、その岡村君は、可愛い声で歌を歌いながら踊り出した。先生達も「いいぞぉ、岡村君!」と掛け声を掛ける。それをきっかけに何人か踊り始め、狭い部屋の中でお話会はダンス披露会に。最後に私達が「アルプス一万尺」を披露し、楽しい会はお開きになった。

以来、私は時々ここに来て、日本語を教えたり、遊んだり、食事を作って一緒に食べたりしていた。彼等は複雑な家庭事情があるとはいえ、恵まれている方だろう。衣食住、書籍、電化製品、遊び道具、その他生活に必要な物は揃っている。親代わりのスタッフが、共同生活の規則を決め、ホームルームの時間を設ける事により、道徳教育もきっちり行っている。試験結果や学校での出来事を一人ずつ発表するホームルームを何度か垣間見た。おかげで子供達は、当番順に掃除、洗濯、炊事を手伝い、大きい子は小さい子の面倒を見る習慣がついている。まるで、協力し合って生活をする大家族のようだ。

住み込みの先生の話。「彼等はにくたらしい時もあるけど、皆可愛い私の子供達よ。時々自宅に帰るけど、もう心配で、早く戻ってきたいといつも思うわ。」それに対する子供達の答えは
「たまに怒られるのは怖いけど、お母さんやお父さんみたいで好きよ。」お互いの信頼関係もしっかり出来ているようだった。こんな施設がもっと増えればいいのにね。


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