天候 晴れ
風 ほぼ無風
気温 ー40℃
と絶好?のコンデイションの中、まずはウオッカで乾杯。 全員羽毛服をはおっての去りゆく昼の季節を惜しむ総勢8名の大パーテイーが開催された。欠席しているのは「平沢隊員」。原因不明の虚脱感と悪寒に襲われ、あわれベッドで沈没していた。福田ドクターの見立てによると「疲れ・睡眠不足・仕事への緊張感からくる、体の警告信号。休めば治る。病気といえない病気。ついでに西村さんは絶対かからないやつだからネ。」「ほっといてくれや」と心の中で毒づきながら、ともかく肉をぱくぱくと。
いやーうまい。北海道の広大な自然を前にして生ビールの樽を横に、花見をするのに比べて勝るとも劣らない。周囲1000km人っ子一人いないこちらの方が若干勝っているかな。太陽の光がほんわかとふりそそいで、そんなに寒くも感じない。ただー40℃でジンギスカンパーテイーを行うとどんなことになるかというと、まず焼けた肉や野菜は皿に盛ってその後おもむろに口に持っていく通常の過程は不可能である。焼けたら速攻で口に投入しなければ、たちまち・・ほんとにガチガチの冷凍状態に逆戻りである。もちろん解凍してボールに盛ってある肉も焼く分だけ鍋の上に置いて後は屋内と会場を忙しく
行ったり来たりを繰り返さないと、氷の塊に変身してしまう。
飲み物類は缶ビールは空けてから1分以内に空にしなければただの苦い氷になってしまうし、日本酒は紙コップに入れてものの数分でシャーベット状に、かろうじてウォッカやウイスキーは持ちこたえるが、これも20分位で瓶の中に氷の柱が立ってくる。最後まで頑張るのが、まさにこの目的の為だけに存在していると言っても過言ではない「コンクウイスキー」である。通常のウイスキーは45度くらいであるが、これは65度〜70度のアルコール度数で、「しらせ」艦内でも記念品として配布されるがグラスに注ぐとアルコールのもやもやが立ち上り、通常はとても飲めた代物ではない。それがこういう環境で飲むと、飲んだ瞬間ははきりっと冷たく、胃に収まるとカーっと腹の底から熱気があがってくる。ダイナマイト!!
酔いが回ってくるのもダイナマイトで、こればかりで酒盛りを進めていくと瞼にシャッターが降りるごとく、ある瞬間に意識がとぎれて闇の世界に落ちていく。チェイサーとして合間に、ウォッカや軟弱なウイスキーと呼称していた、普通のウイスキーの水割りを含むとちょうどいい具合に酔いが回ってくれた。私はアル中でもアルコール依存症でもないが(ちょっとあるかもしれない)越冬中なにか軽い飲み物をと思ったときは、コンクではないウイスキーの水割りを飲んでいた。前にも書いたが、前の隊で飲みきれず残っていた物も含めて10月までに、150リットルすべてこの強烈なやつを飲んでしまうことになるのだから、大酒のみが揃っていたというか、低温が体の機構を変えたのか、まあとにかくよく呑んだ物である。大量に用意した肉も食べ尽くし、最初の屋外ジンギスカンパーテイーは大成功に終わり隊員諸氏肉体労働の続く中、いい気分転換になったようである。と自分だけで満足していた。
−40℃、総勢8名の大パーテイー
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
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